第1回教団の文書管理に関する懇談会

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第1回教団の文書管理に関する懇談会 ― これからの教団の文書管理のあり方をめぐって ―



第1回教団の文書管理に関する懇談会

 6月2日、本部総合庁舎4階大会議室において、教学研究所の主催により「第1回教団の文書管理に関する懇談会」が開かれた。同懇談会は、近年の公文書や歴史資料の散逸・廃棄問題をめぐる社会的関心の高まりを受け、教内各機関の教務文書を含め、本教信心に関わる文書・記録類の適正な保全・管理の方途や環境の整備へ向けた動き出しを願って開催された。

 当日は、当局はじめ霊地各機関長及び諸機関・部署の担当職員、また研究所職員並びに関係者が一堂に会し、文書管理をめぐる現状と今後の課題について意見を交わした。また、各機関・部署から10名の傍聴があり、懇談終了後、希望者は教学研究所に移動しての昼食懇談及び施設見学に参加した。

 開会に当たり、大林浩治所長が次のようにあいさつした。

 昨年、設立70年を迎えた本所は、教務・教政文書を含む、信心に関するあらゆる記録資料の管理・運用を、アーカイブズ学の知見を取り入れつつ積極的に展開しようという願いを立てた。もちろん、この願いは研究所だけで取り組むことができるものではなく、関係各機関のご理解ご協力を得ることがなにより大切だと考えている。とりわけ金光図書館とは、今後より一層協力関係を深めていく要があるが、それに関わって、博物館的機能を有しつつなされてきた図書館業務と、研究所の資料管理業務との関係について、改めてその歴史を振り返っておきたい。

 研究所は、昭和29(1954)年の発足以来、本教資料の収集・管理を担ってきたが、当初からその管理業務自体が研究課題となってきた経緯がある。資料は、研究者の意図が優先されると、その研究範囲内でしか収集されないという偏りが生じてしまうからだ。そうした問題から、昭和46(1971)年に設けられたのが「資料室」である。人員確保の問題により一時頓挫しかけるが、昭和52(1977)年に改めて「資料委員会」を立ち上げ、翌53年9月、室長、室員を配置しての「資料室」が再発足、さらにその10年後の平成元(1989)年4月1日に、教令で「資料室」の設置がうたわれることとなり、現在に至る。

 一方、図書館では、昭和22(1947)年の開館から20年を経た昭和42年4月に、「資料図書館」としての機能を持つことが願われ、「金光教資料室」が設置された。さらに平成5(1993)年の創立50年には、「教団の資料館」と銘打った役割が当局から要請されるが、公開性を原則とするあり方から、抜本的な見直しが迫られ、「特色ある宗教図書館」として今日に至ったという経緯がある。

 時の当局において、財的な事情から機関統合も意識にありながら、「教団の資料館」としての文書管理の一元化が断念された理由については、第1回/2回金光図書館に関する懇談会(平成5年2月16日/5月11日)で明らかになっている。そのとき主な論点としてあがったのは、図書館本来の公共性・公開性と、守秘義務を伴う教務文書類を含めた教内の記録資料の秘匿性との関係の両立が難しいということであった。

 とはいえ、今後、教団全体としての文書管理体制を構想していく必要があることからすれば、こうした歴史的経緯を踏まえつつ、公開性を基本として従来の博物館的機能を継続、拡充する図書館、そして秘匿性の高い教務文書類の保全・管理を担う研究所というように、効率的に各機関の特色を生かしながら、財的問題への対応も図られていくことが期待されよう。

 さらには、このような文書管理体制の構築が、教内各機関・部署における業務の適正化と負担軽減につながっていくことも願っている。年々増え続ける文書類を各部署ごとに管理し続けるのは、それだけで大変な作業だからだ。

 だからこそ、森友関係の公文書廃棄が社会的に問題化されるような今にあって、記録され、文書として管理、保存されることが、自分たちの御用のあり方の未来につながっているということを改めて心に留めつつ、教団の文書管理の適正化へ向けた一歩を、共に踏み出していきたい。

 その後、教学研究所職員2名により発題がなされ、全体での懇談が行われた。以下、発題および全体懇談の概要を記す。

【発題①】


教団の文書管理の構想とその願い
  白石淳平(教学研究所第一部/資料室担当部長)


白石淳平(教学研究所第一部/資料室担当部長) 本所はこれまでも教内資料の収集・管理を担ってきたが、あくまで個別的な対応に留まるものであり、網羅的かつ一元的な管理には至っていない。そのため、例えば教会の合併・解散時の文書廃棄や、秘匿性の高い文書の流出といった可能性を未然に防ぐためにも、信心の記録を未来へ確実に届けるための文書管理体制を、教内各機関と共に構想したい。

 この構想では、京都大学大学文書館のノウハウを参考に、教内各機関で保存年限が満了した文書(非現用文書)を定期的に研究所に移管し、資料室が中心となって整理・保管するシステムの構築を目指す。これにより、各部署の管理業務を軽減すると同時に、文書の散逸・廃棄を未然に防ぐことが期待される。

 今回、試験的に総務部および布教部の取り扱い文書につきリスト化の作業にご協力頂いたが、このたびの取り組みをモデルに、今後、各部署内での文書整理・リスト作成の日常化や、教内への啓発の方途も講じていく必要がある。

 なお、文書の公開性の問題については、一般の公文書館が原則公開であるのに対し、本所で取り扱う資料は個人情報保護等の観点から原則非公開となっている。その上で、教学研究上の必要性や、教外からのレファレンスに応じて、所長の責任のもと、公開が認められるケースに限り閲覧・活用を許可することとなっている。今後、教団全体として文書管理体制を一元化していくに当たっても、従来の基準を原則としつつ、機密性の高い特定文書等については定期的な移管対象とはせず、引き続き各部署での管理とするなどの措置も必要となると考えている。

 今後の主な課題としては、「短期保存文書類内規」の再検討や、廃棄の基準と方途の明確化などが挙げられる。さらに、文書の保管環境の整備が喫緊の課題であり、総合庁舎内の教団書庫の共同管理や、文書管理を担う人材の確保・育成も重要となる。第1回の会合を経てのこれからは、各機関・部署ごとの課題を扱う部会形式での議論も継続的に積み重ねていくことで、教内各機関の協力関係をさらに緊密にしていきたい。

【発題②】


資料管理業務の現状と今後の課題
     毛利 義幸(教学研究所資料室長)


毛利 義幸(教学研究所資料室長) 研究所の資料室では、資料の「収集」「整理・保管」「運用」という三つの主要業務を行っている。資料の収集は、現地調査によるものと、個人・教会・機関からの提供によるものがある。近年は、教庁や機関よりの定期的な移管に加え、各教区の布教史編纂委員会や、教会単位での資料の受け入れ依頼も増加傾向にある。

 収集された資料は、劣化を防ぐため原本の内容を忠実に再現した複製本を作成し保管されるとともに、検索・閲覧の便に利するべく目録を作成し、研究に供するという形で運用される。そのため所内では研究者・資料室員らが協力して毎月資料整理を行い、適切な保全・管理に努めている。今後、教団全体としての文書管理体制に移行していく際にも、研究所資料室として培ってきたノウハウを活かし、開示請求に応じて検索・閲覧できるよう適切な所在指定と保管を徹底していきたい。

 なお、資料の保管については、複製本は平成5年に建てられた資料庫に保管し、原本は教団書庫に納められているが、やはり、さらなるスペースの確保と環境の整備が喫緊の課題である。

 また、現状本所の管轄外ではあるが、祭場に保管されている教務書類についても対応が急がれる。

 今後はさらに、教団の財産である歴史資料として、そうした教務文書を確実に保全していくため、霊地諸機関及び各地の布教・教務センターが連携し、文書管理体制を構築していくことが求められる。

全体懇談


各機関・部署の実務においては、廃棄の判断が不明瞭であるため、できる限り全て現物保存するというのが現状であろう。そうすると、廃棄基準のさらなる明確化によって逆に資料が失われてしまう懸念もある。改めて、保存期間や移管の方途、また廃棄の判断基準について、機関を超えた協議の積み重ねが重要となるだろう。

実際の文書の廃棄に当たっては、今後の予算措置や、機密性の高い文書の適正な保全および処分方法について、統一的なガイドラインの提示が課題となってくる。

教会の合併・解散時における文書の保全については、各教会の手続き関係ヘの配慮も要する問題であり、教務としては十分なサポートが出来難いのが現状であるが、相談窓口を一本化するといった対応も含め、今後さらに検討していきたい。

文書類の受け入れに関わっては、現状、主に図書館と研究所という二つの窓口があるが、それに限らず、教内の各所に相談が寄せられた際に適切に対応できるよう、刊行物や物品は図書館、文書や記録類は研究所という責任分担について、全教への周知、および各機関の情報共有が肝要となる。

教務文書の機密性や研究所と図書館の担当責任も踏まえた適正な対応が可能となるよう、今後、総務部を中心に内規の修正にも着手していく要があろう。

放送センター等の関係諸機関、また各地の布教・教務センターにも、劣化が危ぶまれる文書や記録類が保管されている。そうした各機関の資料についても、今後の適正な保全へ向けた対応が望まれる。

学院では、その創設以来、個人情報保護の観点から秘匿性の高い文書を多く保管してきているが、草創期や戦時下の資料など、歴史的に重要なものも含まれる。今後、研究所はじめ関係機関の協力を得つつ、その全容把握や保存環境の整備へ向けた動きをつけていきたい。

今回は主に紙の文書管理が焦点となっているが、教話や講話の記録を含め、映像や音声といったデジタルコンテンツの保全と活用についても、今後の対応を協議していく必要がある。

図書館ではこれまで、原則公開・活用に資するためデジタルコンテンツの収集と保全に努めてきたが、そこで培われたノウハウをもって、非公開のデジタル資料についても、研究所と協力しつつ収集・保管していく可能性を模索していきたい。

本教教団の教政・教務は、その草創期以来文書主義を本来としており、その意味で音声記録等は副次的なものと言える。そうとして、現状その管理は各担当に委ねられており、さまざまなリスク回避や将来的な活用のためにも、教内各機関共通の管理基準を検討しておくことが必要であろう。

また、稟議等は、本来永久保存対象となる文書と考えられるが、そうした非現用の長期保存文書類の保全方途や、現状の管理状況の確認についても、今後の課題となる。このたびの懇談会が、そうした意味でも、教団全体の文書管理の適正化へ向けた促しとなることを期待している。

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