研究業務

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平成29年度研究題目



 本所では、教規の規定に基づき、毎年各所員は、研究題目を所長に提出し、認定を受けた上で研究を取り進めて、年度末までに報告をまとめ、所長に提出します。提出された研究報告は、所内での検討を経た後、発表の必要性が認められた報告について、紀要『金光教学』誌上で発表されます。
 本年度の各所員の研究題目は以下の通りです。


第1部(教祖研究部門)



大林浩治


 金光大神直筆資料に見る藩との交渉


 一昨年に提供された金光大神直筆資料のうち、帳面の体裁をとったものは、ひとまずの解読を終え、研究的な活用に供されているが、その他にも、木札や紙片などの資料が多くある。ことに、藩への献金と、その手続きを記した資料が数多くあり、ここからは、維新期広前実態の、より詳細な内容が明らかになることが期待される。
 本研究では、これら直筆資料の内容を解読し、主として藩との交渉を中心に、「覚書」「覚帳」や他の帳面類も含め、相互の事実関係の把握が目指される。 

岩崎繁之


 金光宅吉筆写帳面「別の帳」部分についての基礎的研究


 金光宅吉の筆写帳面には、前半部の「覚帳」部分に続いて、後半部には、これまで知られていたいずれの帳面にも該当しない内容が、宅吉により「別の帳」として書き記されている。
 この箇所からは、明治四年十二月のお知らせ以降、金光大神が自身の出生から振り返ったもの、またその後、継続して、帰幽する明治十六年までの出来事が、その都度書き留められて、帳面としての体裁がとられていったことがうかがえる。
 今後、「別の帳」部分のもととなった金光大神直筆帳面の性格究明が目指されるが、そこからは、他の直筆帳面類の性格の見直しにつながる可能性もはらまれている。
 そこで本研究では、他の帳面類と比較しながら、「別の帳」の記載内容についての事実関係の検証が試みられる。

白石淳平


  「無礼」の問題とそれが「覚書」にもたらす信仰史的問いかけの意味
   ―他の直筆帳面類の体験的様相も視野に入れて― 


 新たに提供された金光大神直筆資料には、「覚書」「覚帳」に記載が無い内容が認められる。例えば「無礼」に関わる内容である。これらの資料からは、金光大神において、「無礼」の体験把握を通じた、神との関わりへの問いかけが継続的に催されていた様相が浮かんでくる。また、その様相からは、金神に無礼したことが執筆動因とされる「覚書」への影響といった問題も考えさせられる。
 本研究では、他の直筆帳面類も視野に入れて、「無礼」を巡る金光大神の体験把握と、「覚書」に示された問題との関連性を取り上げ、「無礼」の問題から見る「覚書」の特徴が検討される。 


第2部(教義研究部門)


    

高橋昌之


 語られた「老い」の諸相  ―いま求められる議論に向けて―


 超高齢社会とされる今日、「老い」の問題は、社会的な関心となっている。その中で、信仰に「老い」が投げかける意味が問われており、また、そのことで「老い」に与える信仰的な価値とは何かが求められている。
 本研究では、「老い」として語られる状況が、人間や信仰に対するまなざしのありようから取り上げられ、教学的な議論としての「老い」の問題性格の明確化が目指される。


第3部(教団史研究部門)



児山真生


 戦後占領期の布教活動を通じた「教団」構想 ―地方賦課金制度導入の経緯に注目して―


 近年、中央と地方の教務「連携」のあり方が議論されている。とはいえ、こうした「連携」模索には、それに資する手立てに集約して、意義や課題を見ていくこととは別に、「連携」を必要とさせ、問題として浮上する布教実態の様相が、まずもって踏まえられなければならない。
 本研究では、戦後占領期の布教活動の様相を取り上げ、昭和25年の地方賦課金制度の導入といった問題にも絡めつつ、布教活動の実態が念頭に置かれての中央教務と地方教務の関係性、そしてそこでの「教団」構想を巡る問題について究明される。

山田光徳


 明治末大正期の地域社会における教会所設置の諸相


 教団独立以降、教会所は、明治末から大正期にかけて増加するが、それに併せて、教会所の設置に関する通牒が数次にわたり発せられている。地方の実状に応じて出されているかのような、これらの対応からは、教会所の永続性への教団的な取り組みが、どのような問題として意識されているかを考えさせられる。
 本研究では、布教興学基本財団や維持財団の設立など、教団動向を視野に入れつつ、各地における教会所設置の具体的動向が取り上げられ、分析される。


助手の研究



 この他、助手は、所員の指導のもとに研究を進め、金光大神からの「子孫繁盛」に関わる理解が、それを受けた者に与えた意味の究明や、ハンセン病療養所内の求信会への注目から浮上する個々の生と信仰の関わり、また、明治末の信仰理解の共有のされ方や、戦後の「御取次成就信心生活運動」における信仰者レベルでの取り組みの実際について研究を行う。

 なお、各所員・助手の成果は、来年2月上旬に研究報告としてまとめられ、提出される。 


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