紀要『金光教学』

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紀要『金光教学』第59号刊行



高橋 昌之論文


 「語られた「老い」 ―信心をめぐる言語環境への問い―」
  

 この論文は、「超高齢社会」と言われ、高齢者や彼らを取り巻く環境への関心が高まる現代社会の中での信仰の意義や意味とその可能性について教義論的探究を試みたものである。

  具体的には、日本において「高齢化社会」と言われ始める1970年代以降の『金光教徒』等の記事を中心に、「老い」をめぐる語りと信心の関わりの様相を通 時的に考察している。このことを通して、「老い」に対する社会的認識や環境の推移と、「信心は、年が寄るほど位がつく」等の「理解」の捉え方の変化の間に 連動性が指摘されるとともに、そうした動態的な「理解」との関わりで「老い」の現実とそれをめぐる不安や葛藤が問い直されることに、新たな語りの創出可能 性が捉えられている。


山田 光徳論文


 「教会の運営要件と地域社会の動向

  ―岡山県川上郡・吹屋(ふきや)教会の設置から合併までの過程を中心に―」


 この論文は、吹屋教会(昭和17年3月末、合併)を事例に、教会の設置から合併・解散に至る運営過程に注目し、その実態を、地域社会の変容、教師・信奉者の動向、宗教法制度や教規、行政の対応といった様々な運営の要件との関わりで考察したものである。

 具体的には、これまで議論されることの少なかった教会の運営的側面を歴史実態に基づいて描き出しつつ、また、教会の運営維持や活動展開に内包されている、人びとが教会に対して抱く思いや願いがどういう意識のもとにあるのか、そのあり様を浮かび上がらすこととなっている。


竹部 弘論文


 「人知の鏡―「金光大神御覚書」「お知らせ事覚帳」と「金光大神年譜帳(ねんぷちょう)」からのお知らせ考―」


 先年、新たに収集された金光大神事蹟に関する資料の中に「金光大神年譜帳(ねんぷちょう)」がある。この帳面には、維新期の騒乱など社会情勢や、干ばつ、風水害といった天候不順・天変地異のことが、「覚書」や「覚帳」に比して詳しく記されている。

  この論文では、「年譜帳」と「覚書」・「覚帳」の比較対照にうかがえる、同一事蹟をめぐる記述内容の濃淡、疎密に注目している。そして、その要因につい て、帳面それぞれに見られる「人間の側」からの叙述と、「神の側」からの叙述の双方の傾向・特徴を指摘するとともに、人間の「知る」経験を問い直す「お知 らせ」の働きに論及している。


【資料論考】白石 淳平


 「「金光大神暦注略年譜(れきちゅうりゃくねんぷ)」について―同資料に浮かぶ維新期の「知」と「信」―」


 この論考は、新たに収集された資料の一つである「金光大神暦注略年譜」について、各丁毎の記述内容を示しつつ、資料的特徴を明らかにしようとしたものである。

  具体的には、「覚書」や「覚帳」の対照から明らかとなる初出内容が指摘されているとともに、旧暦から新暦への改暦が金光大神の信仰営為に与えた影響など、金光大神と暦をはじめとする民俗知の関係という、新たな注目点が提起されている。


【資料紹介】「佐藤範雄著「教導指針(きょうどうししん)」総論」(解題・須嵜真治)


  「教導指針」とは、佐藤範雄が明治38年の教会長講習会で講義した内容を取りまとめたものである。具体的には、進歩発展する社会、多様化する人びとの関心 や不安に、金光教の特色をもっていかに応えていくかという問題意識から、社会に向けた教導のあり方が教会長、教師へ示されている。本号には「教導指針」の 中の総論が掲載されている。

  • 定価500円(税別)。9月29日から金光教徒社で販売開始。


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