紀要『金光教学』

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紀要『金光教学』第60号刊行



兒山真生論文


 「戦後布教における戦災教会復興対策とその経験

  ―「戦災復興対策要綱」の策定・具体化過程を中心に―」
  

 本論文では、空襲等による戦災教会(300余)の復興を布教方途としての優先的な課題として掲げた、戦後直後の教団の様相が明らかにされている。これまで当該期の教団動向は、議会との関係から教政運営の不安定さが問題とされてきたが、この論文は教会個々と教務との相互主体的、協働的な様相から捉え直すものとなっている。

 具体的には、戦災教会の個別多様な実情から生じる要望に対して、幅広く援助しようとする教務の取り組みが示され、それによって、各教会が救われる面と同時に、場合によっては道の建前を揺るがしかねない事態を招く両義性が浮かばせられている。このような「お道」とは何かが問われる様相は、複雑化する現代において、なお一層切実な問題だということを考えさせるものとなっていよう。


【研究ノート】森川育子


 「教制審議会特設部門における「拝詞」の審議の諸相」


 昭和29年の教規改正を担った教制審議会の特設部門(昭和25~28年)において、「拝詞」等の改定に向けた審議が重ねられていた。本研究ノートは、「拝詞」をめぐる審議経過とそこでの出席者らの経験を問い、同部門の審議がもつ歴史的意義を浮かび上がらせている。

 具体的には、「拝詞」改定の議論が出席者たちの神観をもとに進められようとしたことで停滞した様相を捉え、信心の自己認識を投影することの限界性が浮かびあがる。またその一方で、「拝詞」に関する信心実感や実践からの捉え直しを行いながら、逆に出席者個々の信心への認識が問い直される経験の様相も浮かんでいる。こうした「拝詞」をめぐって問い、問われる関係の有り様からは、「拝詞」に留まらず、様々な面で規定された我々の認識、価値評価に一考の余地を浮かばせるだろう。


【研究ノート】岩崎繁之


 「金光大神年譜帳」と類似資料との関わりについて

  ―作成の順序とそこに浮かぶ諸相への注目―」


 金光大神が明治4年に神から知らせを受け、その出生から生涯の記録を収めた「金光大神年譜帳」(金光宅吉筆写が現存)には、形式や内容の類似する他の2点の資料がある(「金光神暦注略年譜」略年譜部分及び「金光大神手控え綴」中14丁分の記録)。本研究ノートは、これら資料相互の関係性の究明を図る。

 具体的には、各資料の性格を押さえた上で、内容の共通する記事を表形式で提示し、比較分析している。そこでは、それぞれの文章表現や表記形態の変化から、資料の作成順序が示されるとともに、金光大神が記事内容を推敲、彫琢する姿を浮かばせている。この取り組みによって、「覚書」「覚帳」を初めとする既存資料への理解、眼差しの再検討を促すとともに、今後の教祖研究の展開に向けた論点を導いている。


【資料】〈金光大神事蹟に関する研究資料〉


 「金乃神様金子御さしむけ覚帳」解読文


 「金乃神様金子御さしむけ覚帳」は、平成27年に教団へ提供され、これまで「金光大神直筆帳面1」と仮称されてきた。同資料からは、金光大神と参拝者間の金銭融通(立教以降明治以前)の様子をうかがえることが先行研究で明らかとなっている。この度、解読、分析を経て、多方面での更なる講読、活用のため、その資料全体の解読文を掲載する。


【資料解説】堀江道広


 「「金乃神様金子御さしむけ覚帳」について」


  「金乃神様金子御さしむけ覚帳」解読文を講読する一助として作成した解説文。帳面自体の体裁をはじめ、大きく四つのパートで成り立つという資料全体としての構成やそのパート毎の概要などがまとめられている。

  • 定価550円(税込)。10月4日から金光教徒社で販売開始。


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