研究業務

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令和4年度研究題目



 本所では、教規の規定に基づき、毎年各所員は、研究題目を所長に提出し、認定を受けた上で研究を取り進めて、年度末までに報告をまとめ、所長に提出します。提出された研究報告は、所内での検討を経た後、発表の必要性が認められた報告について、紀要『金光教学』誌上で発表されます。

 本年度の各所員の研究題目は以下の通りです。


第1部(教祖研究部門)



岩崎繁之


 「覚帳」、「年譜帳」、「覚書」書き分けの究明

  ―帳面相互の影響関係に向けた基礎的研究―


 金光大神は明治七年に「覚書」を書き始める以前から、「覚帳」、「年譜帳」、「暦注略年譜」など複数の帳面において、自身の経歴を記していた。こうした帳面相互の関わりに注目することで、複数の記録を書き分ける金光大神の姿や、出来事が様々な角度から立体的に把握されていた実態的様相を捉えることが期待される。
 本研究では「覚帳」、「年譜帳」、「覚書」相互の影響関係に分析を加えると共に、特に「覚書」執筆が始まる時期の状況を再把握しながら、帳面書き分けの様相を究明する。

堀江道広


  「金乃神様金子御さしむけ覚帳」を手がかりとした「広前」への考察

  ―訪れた者達と金光大神の関係に注目して―


 金光大神が記した「金乃神様金子御さしむけ覚帳」(安政六年~明治元年)には、金光大神のもとを訪れた者に対する、金銭の融通記録が残されている。この金銭融通は神の「さしむけ」だったとされ、従来なら参拝者と見なされなかった可能性のある者との関わりをも、重大な事態と受けとめた金光大神の様相を浮かばせている。
 本研究では、同帳面に見られるこうした特徴に注目し、必ずしも信仰の有無を前提としない人々との関わりに浮かぶ、「広前」という場のあり様を考察する。


第2部(教義研究部門)


    

高橋昌之


 原子爆弾による経験の諸相とその意味
  ―神仏論・救済論に注目して―


 太平洋戦争末期、日本では広島と長崎に原爆を投下されて多くの命が犠牲となり、生き延びた人やその子孫にあたる人々も、放射能の影響などに苦しんできている。戦後に教団が行った調査や、被爆した教師や信徒を初めとする者の記録を検討すると、放射能被害の語り難さに浮かぶ救済の意味や、被爆者に様々な神が現前した意味の究明などが、課題として浮上する。
 本研究では、被爆地が「ヒロシマ」「ナガサキ」として国際的に認知されてきた実際も視野に入れながら、原爆による被災が人類に投げ掛ける問いを、先人らの経験に尋ねつつ考察する。


第3部(教団史研究部門)



白石淳平


 昭和戦後期における「教祖」受容の諸相


 本教において昭和戦後期は、対社会的な手立てを講じるべく教団が構想され、様々な施策が実現された時期であった。また一方、当時は新たな『金光教教典』刊行といったテキスト環境の変化も相俟って、教団構想とは異なる「教祖」受容のあり方を窺うことが出来る。
 本研究では、多様な立場・役割を持つ人々の「教祖」受容に関する営みが、本教の自己確認に及ぼした様相を検討し、「教団史」の歴史像を眼差す視座に培う。

山田光徳


 明治中期から大正期にかけての社会と金光教

  ―社会事業の実践に見る社会の現前性と信心への意味―


 一教独立以降、政府主導の社会改良運動に伴って社会事業を展開した本教をめぐっては、従来、確固たる信心主体による実践の様相として議論される傾向があった。しかし改めて当時の実践を検討すると、苦しむ人間や問題を生む社会を前にして、我知らず動き出す者達の様相も窺われ、これまでの見方に再考を促してくる。
 本研究では、当該期の諸団体による「貧民救済」や「幼児養育」等の社会事業において、いかなる「社会」が実践者に現前し、信心に問いを投げ掛けていたのかを追究する。

須嵜真治


 近代移行期における都市形成と布教

  ―岡山市域の神道金光教会支所に注目して―


 本教の布教史研究をめぐっては、布教者個人への着目のみならず、地域社会、とりわけ村落社会との関わりを視点とする試みがなされてきた。そして今後は都市部における布教の様相など、更なる具体的事例の蓄積が願われている。
 本研究では、地方都市でありながら近代都市形成の典型的特徴をそなえ、かつ距離的にも大谷との繋がりを窺わせる岡山市域に着目し、その地で求められた信仰や救済の有り様に浮かぶ布教を捉える。

森川育子


 昭和初期の青年における信心希求

  ―松鷹長一に注目して―


 太平洋戦争開戦に向かう昭和の初期、不安定な時代社会の中で殊に青年たちは、真正への渇望と現実の落差に焦燥を抱いていたとされる。この時代を生きた一青年の松鷹長一(後の万代教会初代教会長)は、自身の来歴や教会修行の様子、教義講究所での講話記録等を残しており、当時の時代的関心と信心との関係を問うている。
 これまで当該期については、教団の「自覚」という、本来性確認の文脈に沿って信仰者を捉える傾向があったが、本研究では松鷹への注目から、時代社会と交錯する信仰リアリティ追究の様相を浮かび上がらせる。


助手の研究



 この他、助手は所員の指導のもとに、明治末大正期の家庭に関する信仰言説と生活の乖離に浮かぶ問題、『金光教教典』の編纂過程や受容等にみる教祖への問い求めと救済への眼差し、について研究を行う。
 なお、各所員・助手の成果は、来年2月上旬に研究報告としてまとめられ、提出される。


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