紀要『金光教学』

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紀要『金光教学』第61号刊行



 金光教教学研究所では毎年、研究の成果を紀要『金光教学』に発表してきている。本年度刊行の第61号には、2編の研究論文のほか、金光大神事蹟に関する研究資料が掲載されている。各論文、研究資料の概要は以下の通り。

高橋昌之論文


 「「めぐり」という言葉にみる信心の姿」
  

 この論文は、本教において運命的かつ否定的価値を帯びる傾向にあり、現在では公の場において言及しがたい言葉と目される「めぐり」に注目し、人間やその生に対し規定的にも作用する言説を成り立たせてきた信心の在り方と、それが今日に与える意味を追究している。

 具体的には、「めぐり」に言及した教導・教話が数多く見られる明治末大正期の教内紙誌や教話集等の言説、例えば『金光教徒』誌上の「信仰問答」欄にて繰り広げられた「めぐり」についての読者と記者の応答の様相や、「めぐり」に関して語られた「教祖」像のありよう、さらには、困難な境遇を生きる様が注目された人物の具体的様相を浮かばせる昭和前期までの資料の分析から、「めぐり」の意味把握を通じて展開された信仰営為の検討が試みられている。

 そのことを通じ、信仰言説に一定の力強さを与える「めぐり」という言葉が、苦難を抱える人間には強迫的にも作用する一方で、そうした言説が自らが生きている世界の方へ目を向けさせ、そこに信心する主体が立ち上がる契機ともなることなど、信心と言葉をめぐる救済の限界性と可能性を浮かばせることとなっている。


白石淳平論文


 「明治改暦と「金神」 ―金光大神における神把握をめぐって―」


 この論文は、「金光大神暦注略年譜」や「金光大神年譜帳」等、近年新たに提供された諸資料に注目し、広前における金光大神と人々とのやりとりの実際から、改暦後の明治の社会においてなお人々に生きられていた「金神」のありようを浮かばせつつ、明治期における「金神」と金光大神との関わりについて考察している。

 具体的には、諸資料の紙面上に見られる神表象や伝承資料から、明治初期における金光大神の神把握のありようを浮かばせるとともに、その後に明治改暦での「金神廃止」によって受けた影響について、「暦注略年譜」の様相を手がかりに考察している。さらには、明治10年代以降に広前を訪れた官憲や、後に「金神」について多く伝えた直信とのやりとりから、人々においてそれぞれに生きられた「金神」の実在性に触れる中で、神との関わりを繰り返し押さえ直すこととなっていた金光大神の営みのありように論及している。

 以上の考察を通じて、神を名称や属性で捉えるような、従来の個体識別的な神観に対し、複数的で重層的な神のありようの把握を伴う、金光大神のしなやかで豊かな信心の可能性を浮かばせることとなっている。


【資料】〈金光大神事蹟に関する研究資料〉


 「御金神様御さしむけ金銭出入帳」解読文


 「御金神様御さしむけ金銭出(で)入(いり)帳」は、平成27年に教団へ提供され、これまで「金光大神直筆帳面2」と仮称されてきた。同資料は先行研究では、昨年掲載した「金乃神様金子御さしむけ覚帳」とあわせ、金光大神と参拝者間の金銭融通の様子をうかがえるものとして取り上げられている。この度、解読・分析を経て、多方面での更なる講読、活用のため、その資料全体の解読文を掲載する。


【資料解説】岩崎繁之


 「御金神様御さしむけ金銭出入帳」について


 「御金神様御さしむけ金銭出入帳」解読文を講読する一助として作成した解説文。帳面自体の体裁をはじめ、神の祭祀に関する支出記録や金銭初穂の年次別集計といった本文記録の傾向についてまとめられている。

  • 定価550円(税込)。10月3日から金光教徒社で販売開始。


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